ディー・エヌ・エー(DeNA)がスポーツ事業を加速させている。2011年の横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)を皮切りに、陸上チーム(「DeNA Athletics Elite」)、B.LEAGUEに所属するプロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」(以下、ブレイブサンダース)、そして21年4月からはプロサッカークラブ「スポーツクラブ相模原」(以下、SC相模原)の株式19%を取得し、経営に参画した。

 前編では、「データ」に基づいたDeNA流のプロスポーツチーム運営について、横浜DeNAベイスターズ、川崎ブレイブサンダース、SC相模原のマーケティングおよび広報責任者である3人に聞いた。

 後編では、SNS(交流サイト)などデジタル戦略や、スポーツを通じたまちづくりについて話を聞いていく。

左から黒田知誠氏、藤掛直人氏、佐合勇規氏(写真=中村嘉昭)

左から黒田知誠氏、藤掛直人氏、佐合勇規氏(写真=中村嘉昭)

 DeNAのスポーツ事業では、IT企業の傘下にあるという強みを生かした様々な取り組みを推進している。その1つが「YouTube(ユーチューブ)」をはじめとするデジタル施策。この分野で、好調な成果を上げているのはブレイブサンダースだ。

 Bリーグのクラブの売り上げ規模はプロ野球の約10分の1、Jリーグの5分の1といわれている中で、川崎ブレイブサンダースのYouTubeチャンネル登録者数と「TikTok(ティックトック)」のフォロワー数はそれらに引けを取らないどころか、上回る数字を誇る。

 2年前は4000人程度だったYouTubeのチャンネル登録者数が、今では25倍以上の10万人を突破。その数はBリーグのみならず、サッカーのJリーグを合わせても1位、TikTokのフォロワー数は、日本のプロスポーツクラブで読売ジャイアンツに次ぐ2位。どちらも10万人を超えている。

藤掛直人・DeNA川崎ブレイブサンダース 事業戦略マーケティング部部長

藤掛直人・DeNA川崎ブレイブサンダース 事業戦略マーケティング部部長

2014年にDeNAへ入社、スマートフォン向けゲームのプロデュースを担当。18年より川崎ブレイブサンダースの運営に携わる。(写真=中村嘉昭)

藤掛直人(以下、藤掛氏):デジタルを使った施策に力を注ぐようになった大きな要因の1つは、野球とバスケのメジャーさの違いなのです。野球はどのチームにも番記者さんがいて、テレビや新聞などの主要メディアでささいなことでも取り上げてくれるじゃないですか。

佐合勇規氏(以下、佐合氏):そうですね、他のスポーツに比べれば、ささいなことでも取り上げていただけますね。ありがたいです。

藤掛氏:うらやましさしかないです。バスケはプロスポーツとしてはマイナーゆえに、各種メディアで取り上げられることは希(まれ)で、選手の個性や魅力をもっと世の中に知っていただきたくても、それを伝える手段がありませんでした。いかに情報を届けるかというところは1から考えなければいけませんでした。

 既存のメディアに取り上げられない以上、自分たちから発信する「オウンドメディア」を持ち、育てていくしかない。そう考えて着目したのがYouTubeです。実はブレイブサンダースのYouTubeチャンネル自体は承継前から存在していましたが、19年7月時点では4000人足らずの登録者数。投稿内容は、試合ハイライトやプレー集、プロモーション動画などが中心でした。

 そこで、自分たちが見せたいものを投稿するのではなく、より多くの方に興味を持って楽しんでいただける動画を出すべきだと考えました。プロバスケ選手である強みとYouTubeらしい企画が交わる領域で勝負することにしたのです。

 例えば、遠くから制限時間内にシュートを決められるかに挑戦する企画「【ガチの神回】プロバスケ選手はどれくらい後ろからシュートが決まるのか検証した結果....」(19年12月投稿)は、再生回数が180万回を超えるヒットになりました。

 エンタメ色の強い企画は結果的に、選手のユニークなリアクションや選手同士の和気あいあいとした関係性を引き出すことにもなりました。初めて試合を見に来た人を対象にしたアンケートでは50%以上の方がYouTubeを見てからチケット購入に至ったという結果が出たのです。

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